$\LaTeX$(ラテフ)は学術的な文書作成や論文作成に非常に対して強みを持つツールです.大学のレポート課題や論文執筆にあたり,LaTeXの利用が必須になる場合や推奨される場合があります.

私が所属している大学では,LaTeX強制の場面はありませんでしたが,推奨される場面は幾度かありました.
使いこなせるようになれば非常に便利なツールであることは間違いないのですが,負担になるのが環境構築と特有のコマンドです.しかし,近年では初心者でも簡単に利用できるエディタがいくつか登場しており,用途に応じて自分に最適なツールを選べるようになっています.
この記事では,代表的な4つのLaTeXエディタ(TeXWorks、LyX、Cloud LaTeX、Overleaf)の全てを一通り使用してみた経験をもとに,それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介します.
結論
結論から先に書きますと,小規模なプロジェクト(1つのLaTeXファイル)を扱う初心者の方には,環境構築の必要が無いOverleafやCloud LaTeXをオススメします!
また,大規模なプロジェクトを扱い,拡張性を重視する上級者の方には,TeXWorksをオススメします!
各エディタの違いや特徴については,この後の章で詳述していますので,ぜひ最後までご覧いただけると幸いです.
ツール比較表
ツールの名前(リンク)をクリックすると,各ツールについて説明している章にジャンプします.
| ツール | 区分 | 共同作業機能 | 初心者向け | 料金 |
|---|---|---|---|---|
| TeXWorks | ローカル | × | △ | 無料 |
| LyX | ローカル | × | ○ | 無料 |
| Cloud LaTeX | クラウド | × | ○ | 無料 |
| Overleaf | クラウド | 無料:○ 有料:◎ | ◎ | 無料プランと有料プランあり |
TeXWorks
公式サイト:http://www.tug.org/texworks/
基本的な特徴
大枠としてはローカル(自分のPCにインストールして使用)に分類され,TeXWoks自体はシンプルかつ軽量である点が特徴です.Windows,Mac,Linuxなど,複数のプラットフォームに対応しています.
一方で,TeXWorks自体は軽量であるものの,別途 TeX Liveなどのディストリビューションをインストールしておく必要があります.(TeXWorksは,メモ帳のような単なるエディタに過ぎないため,TeXを動かす基盤のようなものとして,TeX Live 等が必要です.)
このTeX ディストリビューションのインストールが少々重荷になります.インストール手順自体は,簡単なのですが,とにかくインストールに時間がかかります.経験談として,SSD搭載のノートPCをもってしても数時間程度かかりました.
また,一般的なワープロソフトのように,完成系を見ながらそれを直接編集する方式(専門用語で,「WYSIWYG」(What You See Is What You Get,ウィジウィグ)と言います)ではなく,専用のTeXコマンドを使って記述する必要があるため,上級者向きと言えるでしょう.
長所
- TeXWorks自体は軽量で動作が速い: 他の高度なエディタに比べ,動作が軽快です.
- 経済面・サービス持続性の心配が不要: オフラインで作業ができるため,サービス終了やコストの心配が要りません.
- 拡張性が高い:ローカルで動かすため,機能拡張が容易です.また,他のオンラインサービスのように作成できるプロジェクトの数やコンパイルに制限が無いため,大容量のプロジェクトでも扱うことができます.
短所
- 別途TeXディストリビューションが必要: エディタ自体は軽量ですが,全体的な環境構築という面では大規模になってしまいます.
- 共同作業・校閲機能がない: 複数人で同時に作業や校閲コメントの入力が出来ないため,論文などを指導教員に添削してもらう必要がある場合は,他のエディタを検討する必要があります.
こんな人におすすめ
LaTeXの上級者にオススメです.特に,高度な機能を使いこなしたい場合や大容量のプロジェクトをオフラインで扱いたい場合に向いています.
LyX
公式サイト:https://www.lyx.org/WebJa.Home
基本的な特徴
LyXは,WYSIWYM(What You See Is What You Mean)方式を採用したLaTeXエディタで,一般的なワープロソフトと同様に,視覚的に文書を編集できます.TeX特有のコマンドを使用する必要が無いため,初心者の方であっても扱いやすいエディタです.(プリアンブル等を編集したい場合など,一部コマンドが必要な場面もあります.)
長所
- 視覚的・直感的なインターフェース: 文書を視覚的に作成でき,LaTeXのコードに不安がある初心者の人でも扱いやすいです.図表はコマンドを使わず,クリック操作で簡単に挿入できます.数式もパレットから選択して挿入可能です.
短所
- LaTeXの細かいカスタマイズには向かない: 深いLaTeXの設定やカスタマイズには不向きです.
- 別途TeXディストリビューションが必要: こちらも,LyX単体ではコンパイルできないため,別途TeXディストリビューションが必要になります.前述の通り,インストール手順は簡単ですが,環境構築に時間がかかってしまいます.
こんな人におすすめ
LaTeX初心者の方など,使い慣れたワープロソフトのUIに近い形でレポート・論文を執筆したい方にオススメです.
Cloud LaTeX
公式サイト:https://cloudlatex.io/ja
基本的な特徴
Cloud LaTeXは,オンラインでLaTeX文書を作成・編集できるプラットフォームです.インターネット環境さえあれば,どこでも・どの端末からでも作業できます.また,環境構築がほとんど不要(サービスの会員登録くらい)であり,即座に利用を開始できる点が強みです.
一方,限られたサーバのリソースを多くのユーザで共有することになるため,プロジェクトの数やサイズ,コンパイル時間などに制限があります.
長所
- オンラインでの作業: どこからでもアクセスでき,インターネット環境があれば作業できます.
- 環境構築が(ほぼ)不要: 強いて言えば,アカウントのサインアップくらいで,煩雑な環境構築を行う必要がありません.
短所
- コードエディタ:コードエディタでのサービス提供になるため,LaTeXコマンドを使いこなす必要があります.
- 各種制限:プロジェクト数やサイズ,コンパイル処理,機能拡張に制限があります.
▼ Cloud LaTeX 利用にあたって、なにか上限はありますか
- 1アカウントにつき利用できる容量の上限は 1GB です。
- 1アカウントにつき作成できるプロジェクト数の上限は 999 です。
- 1プロジェクトにつき一斉追加できるファイル/フォルダ数の上限は 500 です。
- この上限設定は異常に膨大な数のファイルを誤ってアップロードしないように設けたものです。実際に Cloud LaTeX を快適に利用するためには 1 プロジェクト内のファイル数を 100 以内に収めてください。
- 1回のコンパイル処理開始から 2 分経過すると処理完了を待たずにタイムアウトします。
こんな人におすすめ
一つのプロジェクト(レポートや論文)を複数の端末で管理・編集したい人,環境構築を避けたい人にオススメのサービスです.
Overleaf
公式サイト:https://ja.overleaf.com/
基本的な特徴
Overleafは,Cloud LaTeX同様にLaTeX文書のオンラインエディタであり,特に学術論文の執筆に人気があります.共同編集機能が搭載されているため,第三者に添削してもらう必要がある場合に大変便利です.
長所
- 共同編集機能: レビュー機能等があり,添削・チェックに大変便利です.
- 直感的なインターフェース: コードエディタに加え,ビジュアルエディタも提供されているため,LaTeX初心者の方でも比較的使いやすい設計になっています.
短所
- 無料プランに制限あり: Overleafには,無料プランと有料プランがあります.無料プランでは,コンパイルタイムアウト(時間制限)や,招待できる共同編集者の制限(1名のみ)と厳しくなっています.
こんな人におすすめ
卒論など第三者に添削・チェックしてもらう必要のある文書を作成する場合や,環境構築をせずにビジュアルエディタ(ワープロソフトのように視覚的に編集できるエディタ)を使いたい場合にオススメです.
実践編
ここまで,LaTeXの環境構築についてご紹介しました.環境構築が済んだら,早速レポートを作成してみましょう!
当サイトでは,線形代数や解析学,実験レポート(論文),引用管理について記事をまとめています.以下のリンクより,各記事を閲覧することができますので,併せてご覧いただけると幸いです.




まとめ
各章での解説やツール比較表などを参考に,目的・用途やご自身のバックグラウンドに即したツールを選んでいただければと思います.
どのツールを選んだとしても,共通して言えることはバックアップの重要性です.メインで使用している環境とは別にバックアップを保管しておくことを強く推奨します.
ローカルをメインにする場合:ソースファイルのコピーをUSBメモリやクラウドサービスに保管しておく.
クラウドをメインにする場合:ソースファイルをダウンロードしてローカルに保存しておく,別のクラウドサービスにもコピーを保存しておく.
今回ご紹介したクラウドサービスが突然サービスを終了したり,データが消失したりする可能性は極めて低いと思われますが,可能性がゼロであるとも断言できません.信頼性の高いサービスではありますが,進級査定に影響するレポートや卒業査定に影響する論文などは,確実にバックアップを取っておくようにしましょう.

