この記事では,模擬授業(高校・情報)準備の基本的な考え方と心構えについて,自身の体験(教職課程+教育実習)談をもとにまとめてみました.
授業に対する考え方は,本当に人それぞれであり,「この記事で紹介している内容が絶対に正しい!」と断言できるものではありませんが,これから学内や教育実習で模擬授業を控えている学生さんの参考になれば幸いです.
また,本記事は高校情報科の授業準備を想定していますが,授業に対する基本的な考え方など,一部他教科・他校種にも通ずるものがあるかと思いますので,ぜひ他教科・他校種で模擬授業に臨まれる方も最後までご覧いただけると幸いです.
この記事の内容を踏まえた具体的な実践については,次の記事でまとめています.
授業に対する基本的な考え方
まず,大きな考え方として「先生が授業をする意味(意義)は,何なのか?」というものがあります.
そもそも,教科書自体が非常に良く出来ており,その単元で重要なポイントが分かりやすく説明されています.変な話,ある程度自学・自習できる生徒であれば,先生による説明が無くとも教科書だけで学習指導要領に定められた内容を概ね理解することができます.
そのため,先生が教科書の内容を読み上げるだけ,あるいは生徒に教科書を音読させるだけの授業であったとしても,形としては成り立ってしまうのです.(本来は,それを授業として成立させてはいけないと思いますが…)
従って,冒頭で述べた「先生が授業をする意味(意義)は,何なのか?」という考え方に立ち返ると,授業者(先生)は教科書に打ち勝たなければならない(と言うと,少し語弊があるかもしれませんが…)ことになります.教科書の内容に打ち勝つには,次の2通りの方法が考えられます.
教科書よりも分かりやすい説明をする
ある種予備校の先生的な考え方だと思います.「本質的な考え方を指導することで,暗記に依存しない知識や思考を涵養する」というのが代表的な方法だと思います.
しかし,これは中々にハードルが高い方法です.第一に,授業者自身がそれ相応の(本質を)理解をしていることが求められます.第二に,生徒の理解度・習熟度を見極めた上で指導しなければ,単なる知識や考え方の押し売り(授業者の自己満足)に成り下がってしまいます.
一方で,近年は生成AIという強力な味方が存在します.補足説明の文章を考えるタスクは,大の得意です.生成AIが返す内容(正確性)には,十分な注意をしながら,プロンプトを工夫することで具体例込みの分かりやすい説明を作ってくれます.
教科書には無い試みを実践する
グループワーク・ディスカッションやコンピュータを使った演習・実習など,教科書には無い試みを実践するというのも方法の一つです.
この方法も少しセンスに左右される部分があります.例えば,「インターネットプロトコル」という授業テーマに対して,「どのようなグループワーク・ディスカッションのテーマを思いつくことができるか」,「どのような演習・実習を設計できるか」というのは,知識や経験,センスに依存する部分があります.ただし,これも努力でカバーすることができます.
今は,インターネットで検索をかければ,指導案(授業の実践例)などいくらでも転がっています.こうした先輩教員の実践例をいくらでも取り入れたら良いのです.
もし,良い指導案や実践例が見つからなかったとしても,生成AIに投げてみたら,きっとアイディアを複数出してくれることでしょう.
ここまで述べてきたように,良くも(悪くも)簡単に情報が手に入る時代になりました.これまで,「やろうと思ったけど出来なかった」で済んだ評価がこれからは,「やろうともしなかった」という評価になってしまうのです.ちょっとアクションを起こせば,いくらでもアイディアや情報は手に入るのですから.
言うまでもありませんが,「やろうともしなかった」という評価は,教育実習や模擬授業における成績評価としては致命的です.資質・能力の以前に,やる気の問題ですからね.
デジタル・アナログ
高校の情報科は,教科の特性的にスライドを使った授業が許容(むしろ推奨)される傾向にあります.プロジェクターとスクリーンを完備したコンピュータ室で授業を行う場合が多く,環境的にも恵まれています.
ただし,そのような場合であっても,板書(ホワイトボードを含む)を一切しないというのは,少し考えものです.もちろん様々な考え方があって然るべきであり,絶対に正しい・間違いというものはありませんが,高校以下(小・中・高)において板書ゼロは敬遠される場合があるようです.
スライド授業のメリット・デメリット
・単純に板書の時間が浮くので,時間短縮に繋がる.
・文字だけでなく画像や音声,映像を簡単に組み込むことができる.
・板書が不得意な人でも安心して授業できる.
・生徒にとっては,時間短縮がデメリットになる.
→ 板書が追い付かない/何を板書すれば良いのか分からない
・事前にスライドを作っておく必要がある.(事前準備が大変)
実は,スライド授業による時間短縮という効果が教師と生徒の間で利益相反になっており,これが非常に厄介なのです.
皆さんも大学の授業で経験があるかと思いますが,スライド中心の授業では,ノートにメモする内容を自分自身で取捨選択する必要があります.(スライドの内容を全部書き写すのは,物理的に不可能ですし,仮に取捨選択をしてもメモが追い付かないことが多々あります.)
一方,板書中心の授業では,教師が板書に時間を取られる代わりに生徒側はメモする時間の確保に繋がります.そして,本来はあまり良いノートの取り方ではありませんが,板書の丸写しも可能になります.
まとめると,“生徒が板書に追いつけなくなる”,“どこが要点なのか分かりづらくなる” といったリスクを避けるために,小・中・高において板書0%の授業は敬遠される傾向にあります.
仮に,スライド中心の授業であったとしても,その時間の要点(キーワード)を簡単に板書するだけでも効果的な授業になると思います.


